子育て応援コラム:きくちいまさん

エッセイストでイラストレーター  きくちいま さん

エッセイストでイラストレーターのきくちいまです。1973年、東根市に生まれました。大学卒業後コピーライターとして東京の会社に就職、99年に独立、2003年に都会生まれの夫を「雪?たいして降らないよ」とだまして山形に連れて来ることに成功。以来、雪深い村山市に住んでおり、冬が来るたび結婚詐欺だと言われております。家族構成は、わたしたち夫婦と子ども三人(男男女)と犬一匹、わたしの両親。三世代同居です。一人で抱え込まずに「みんなで子育て」をすることが大事と思っています。

緑にもたくさんの種類が…

 雪のかたまりから黒い土が出て、そこに輝くように顔を出すふきのとうは「若菜色」。やわらかな柳の新芽の、黄色がかったような緑色は「柳色」。蓬の葉っぱの裏が白いところは「裏葉色」。まぶしい新緑は「萌黄色」。他にも「若苗色」「若草色」「若竹色」……と、たくさんの緑が生まれる季節が大好きです。この季節になると、わたしは子どもたちと絵を描きたくなります。
「緑にはたくさんの種類があるんだよ、ほら、あの葉っぱをよくみてごらん」
ただ緑とひとくくりにしてしまうのがもったいないほど、東北の緑は鮮やかでつややかでいきいきしています。近くの山は緑色だけれど、遠くの山になるにしたがってだんだん青になっていくのも、都会ではもしかしたら気が付かないのかもしれない。

山形での子育て…子供の言葉が宝となり、大きな自信へ

 いつかわたしがおかあさんになるのならば、山形で子育てしたい。季節のうつりかわりがわかる子に育てたい。そう思っていました。東京から山形に移り住んで十年が過ぎ、その間に、わたしは三人の子どものおかあさんになりました。
今小学生の次男が四歳だったころ、幼稚園の玄関を出たところで、
「おかあさん、冬が来るにおいがするね。これはもうすぐ雪がふるときのにおいだよ」
と言ったのです。
「あとね、雪がとけてくると春のにおいがするよね」
わたしはそれが胸がいっぱいになるほどうれしくて、田舎で子育てをしていてよかった、と心から思いました。神様から花丸のついた作文を返してもらったような、全問正解の答案を渡されたような、大きなご褒美をもらったような気持ちになりました。あの瞬間は今でも宝で、わたしの大きな自信です。
いずれ子どもたちは巣立ちます。でも、たまに帰ってきたときに、彼らを包む空気が、そのときどきの季節の香りに満たされ、そのときどきの色彩にあふれたものであってほしい、と思うのです。
田舎ばんざい。山形ばんざい。ここに住むだけで、幸せな子育てができている。そんなふうに思っています。

「大人って楽しいよ!」と言える母でありたい

 子育ては大変、子育ては楽しい、どっちもほんとうです。ただ、子育てがすべて!というお母さんにはなりたくない。子どもの人生は子どものもので、わたしたち母親の人生はわたしたちそれぞれのものです。好きなことを持ち続けて、「大人って楽しいよ!」と堂々と言える母でありたい。
子どもは母の宝であると同時に家族の宝で、地域の宝、山形の宝、日本の宝です。声を掛け合って、みんなで子育てしていきたいものですね。

 

 

寄稿:2014年

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